「再建築不可物件」とは日常ではあまり耳にしないことばですが、文字通り「もう一度建築するのが不可能な物件」を指します。
それにしても、なぜそのような物件が存在するのでしょうか?
再建築不可物件とみなされてしまう条件や、不動産として売却するときの問題点を開設します。
再建築不可物件とはどのようなもの?
不動産情報を眺めていると、一戸建て中古物件で明らかにまわりと比べて価格が安すぎる、という住宅を見つけることがあります。
相場よりもかなり安い物件はお得に思えて、掘り出し物を見つけた気になるものですが、それがあまりにも極端である場合には必ず理由があるものです。
「再建築不可物件」もそのひとつ。これは一言でいうと「現在存在する建物を一度取り壊してしまうと、その土地にはもう新しい建物は建てられない」というものです。新築・増築をしようと思っても、行政の許可がおりないのです。
つまり、建物が老朽化しても基本的に解体・建替えはできず、その土地に住み続けるにはリフォームでなんとかするしかないということなのです。
こうした土地は、まわりと比べて価値が下がってしまうのは当然です。「掘り出し物」と思ってみたら、実はそこに重大な意味があるのですね。
再建築不可物件になってしまう条件
では、なぜ再建築不可物件は「一度取り壊してしまうと新しい建物を建てられない」のでしょうか。
それは、その土地が現在の法律で定められた「建物を建てていい土地」の条件を満たしていないからなのです。
逆にいえば、現在ある建物が実際に建築された当時の法律では、問題はなかったということですね。しかし都市化が進むにつれてさまざまな決まりが制定され、だんだんその決まりにのっとっていない建物が出てくることになったのです。
具体的には、昭和25年5月24日公布の建築基準法および昭和43年6月15日公布の都市計画法。これらの法律によって、それまでは建物を建てても問題なかった土地が、今後は建築不可能に変わってしまうということが起きました。
これがいわゆる「再建築不可物件」と呼ばれるようになったというわけです。
具体的には、主に下記のような条件の物件が再建築不可物件となります。大きく分けて2つあります。
前面道路が建築基準法上の道路でない
建築基準法第42条において、道路とは「原則として公道などの幅員4m以上のもの」とされています。
まず、この「道路」に接していない土地には建物を建ててはいけないのです。建築基準法第43条に定められている「接道(道路と敷地が接していること)義務」を満たしていない、と見なされるからですね。
接道義務というものがどうして存在するのかというと、非常時に備えるためという理由が1番大きくあります。
たとえば火事が起きた際、または急病人や怪我人が出た際、消防車や救急車といった緊急車両が近くまで入っていけないという事態が起こりうるわけです。
接道義務は、このように万が一の事態にも備えた安心安全な街づくりを考えた際にとても重要なものと考えられます。都市化にともない、時代に合わせて法律が変わっていったため、このように「途中で状況が変わる」ということもあるのですね。
ただし幅員4m未満の道路でも、2項道路やみなし道路など、建築基準法上の「道路」とみなされるものも中には存在するため、確認が必要です。
接道2m未満
では「幅員4m以上の道路に接道している」土地すべてが再建築不可物件ではないかというと、またそうとも限りません。
「道路と土地が接している部分の幅が、2m未満の土地」もまた、接道義務を満たしていないとみなされるのです。
これは、敷地が路地状部分を介して道路に接している敷地、いわゆる「旗竿地」と呼ばれるような土地に多くみられます。
つまり「幅数4m以上の道に、そもそもまったく接していない」「幅数4m以上の道に接してはいるけれども、接している部分の幅が2m未満である」。
これら2つの条件のどちらかにあてはまる土地は、ほとんどの場合が「再建築不可物件」と呼ばれることになります。
再建築不可物件になってしまう要件をまとめると…
上記のことをまとめると、再建築不可物件とは、
・建物のある土地が、建築基準法で定められる「道路」と全く接していない
・建物のある土地が、建築基準法で定められる「道路」と接してはいるが、接する部分の幅が2m未満
・建物のある土地が、幅員4m未満の道路や私道とのみ接している
このような物件を指しているということになります。
再建築不可物件はどのくらいの数が存在するのか
前述のとおり、再建築不可物件は基本的に「古い」ものばかりです。時代の変化とともに法律も改変され、そこから外れてしまった土地ということになるからです。
とすると、全国を見渡してみて比較的古い街並みの地域に、再建築不可物件は多く存在しそうですね。
また、再建築不可物件が存在しているのは、都市計画法で定められている「都市計画区域」と「準都市計画区域」のみです。このことからも、ある程度再建築不可物件が多い地域が絞られそうです。
例として、都市計画区域に定められている東京23区を見てみると、総務省による平成30年住宅・土地統計調査のデータでは、全体の住宅数約490万1200戸のうち約24万2600戸、約5%が接道義務を果たしていないとされています。
同様に、全国における再建築不可物件の物件数は、全体の約6.7%あるとされています。約15件に1件が再建築不可物件だという計算になります。思いのほか多い、という印象を抱くのではないでしょうか。
再建築不可物件の価格相場と売りにくい理由とは
再建築不可物件を売買するときの相場は、通常の周辺相場の5~7割程度といわれています。
前述のとおり、どうしても制限が多い物件であるため、通常に比べて価値が下がってしまい、売りにくい物件であるといえます。以下は売りにくい具体的な理由です。
買主が住宅ローンを組めない
売りに出されている再建築不可物件を購入しようとする買主が現れても、金融機関によっては、住宅ローンを利用できない可能性があります。
再建築不可物件は建物の建替えができないため、既存の建物をリフォームするなどして維持することが求められます。すると活用方法が限定的であるとみなされ、担保価値が低くなってしまいます。
金融機関は担保価値をもとに融資額を決定するため、住宅ローン自体組めなかったり、金利が高くなったりしてしまうのです。
そのため、住宅ローンに頼ることができず、現金で資金を用意できる人でなければ購入できないなど、買主が限られてしまいます。
買主のリスクが高い
再建築不可物件は新たに建物を建てることができないため、買主は現存の建物をリフォーム・リノベーションで維持していくことになります。その費用の負担も大きいでしょうし、リフォームをしても進む老朽化や自然災害などによる倒壊で建物自体が大きな損傷を受けたとき、建替えができないということは大きなリスクになってしまうでしょう。
建替えができないという点は、活用性が低くて不便というだけでなく、買主が避けたがる大きなポイントとなるのです。
現存する建物の状態が、査定ポイントの大半を占める
建替えができないということは、現存する建物の状態や立地のみが、売却の際の大きな査定ポイントとなります。
構造躯体自体が頑丈であればフルリフォームで十分維持可能でしょうし、利便性が高かったり人気が高かったりする地域であれば、売却時の査定価格も期待はできるかもしれません。
しかし逆にいえば、そういう条件がそろわないとやはり売りにくいということです。
まとめ
再建築不可物件がどういったものか、どのような経緯で存在するのかということを知ると、売却がしづらい物件であるということも理解できるでしょう。
デメリットばかりが目立ってしまうような物件ではありますが、再建築不可物件だからこそのメリットや活用方法、また売却するためにはどんなポイントをおさえたらいいかということもまとめました。ぜひ、以下の記事も参考にしてくださいね。
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